大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)135号 判決

被告人 古谷真

〔抄 録〕

検察官の控訴趣意は、要するに原判決の量刑過軽を主張するものであるから審按するに、被告人は、昭和二八年四月頃から遠縁に当る小林洪子と親しくなつたが、同女は間もなく原判示川田茂とも交際を始めたため、同女をなかにして、被告人と川田とは不知反目の間柄となり、その後被告人は、川田において被告人に暴行脅迫等を加える意思ある旨を第三者に話した由等を聞き伝え、遂に被告人の方から、かねて護身用として屡々擅に持ち歩いていた自作の匕首(主文第三項掲記のもの)を川田に示して、闘争を迫る如き態度に出たこと数回にのぼり、その都度川田の方で危害を恐れて避難退譲し、ときには担当駐在警察職員に保護を願い出るが如き有様であり、その挙句、偶々原判示日時に古谷金造方において両名が落ち合つた際些細のことから闘争状態となり、同家前通りの路上に被告人が下になつて倒れるや、所持していた前記匕首を取り出して川田の下腹部を突き刺し因つて傷害の結果死に至らしめたる事実は、検察官の指摘するものその他原判決に引用の各証拠により認め得るところである。尤も、その犯行の直前川田茂が若干飲酒酩酊していて右闘争は比較的多く川田よりの挑発的態度に出た経過も窺い得ること答弁書に主張のとおりであるが、それとても日頃両名が相互反目の間柄なるため客観的には別段深い理由もない発端から当人同志は忽ち格闘状態に突入し、その際川田の方より特に被告人の身体生命に危害を及ぼす程度の暴行等に出た実状もみられないのに、被告人の方で右の如き兇器を所持している意識があるため、斯る傷害行為に出て致死の結末すら惹起したものなるは、前記各証拠によつて明らかである。

故に、他面被告人が右犯行直後自首したこと、被告人の方より被害者の方に或る程度謝罪金の提供あつたこと、その他答弁書主張の諸点を参酌勘按するも猶懲役三年にして執行猶予の特典まで附した原判決は量刑軽きに失して不当のものであり、此の点において破棄を免れない。論旨は理由がある。

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